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並んで眠る守弥と咲良。 すよすよと眠る二人に毛布をかける。 意識のない二人の間で交わされた言葉を額面どおりに受け取るなら、伝承に記された二人の比古が関わっていることになる。 咲良の中に息づく守弥の核……。 神代に近い時代の話だから、封じの期間は千年どころの話ではないのかもしれない。 心臓を取り囲む茨が神格をもつ程になるのも頷ける。 「闇断ちの比古と、闇堕ちの比古……どちらなんだろうねぇ……。 それに、二人の″かぐ″……″かぐや″と″かぐら″………どちらが咲良と関わっているのか……」 古い記録の二人の比古の名は、術によって削られていて確かめようもない。 若い頃に試したことがあるが、ことごとく術が跳ね返された。 かぐやとかぐらにしても、時の権力者に嫁いだのがどちらなのかが曖昧だ。 もう一人は非業の死を遂げたと言われてもいる。 「こまったねぇ……」 闇堕ちの比古ならば、祟りを振り撒く恐ろしい存在と伝わっている。 この世に災禍をもたらす前に封じねばならない掟だ。 言葉は少ないが面倒見の良い曾孫である守弥が、祟りを振り撒く存在になるとは考えたくはない。 封じる……つまり命を断つということもしたくない。 花嫁を迎え、石化と命数の二重のリミットを抱えた守弥。 思いを通わせることだけでも十分ハンディキャップがあるのに、どちらの比古なのか見極めねばならぬとは……。 「闇断ちの比古であればいいんだけどねえ……」 あって欲しくないと思う事に限って、大抵良くない事に繋がる。 だが。 どうか闇断ちの方であって欲しいと願うばあ様なのだった。

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