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「大人しくしていれば手荒なことはしない。 そっちのお前」 「守弥だ」 「ああ。 守弥、お前が心配するような事は無いから安心しろ」 そうっと降ろされた咲良は、そのまま椅子で大人しくしている。 ばあ様が止めないのは、今の自分に必要な診察なだからなのだろう。 そう悟って指示に従う。 「で……。 一晩でどのくらい伸びたんだったっけな」 「20センチ強……といったところだねぇ。 成長期の子供というのを差し引いても、ちょっと伸びすぎのような気がするんだよ」 「確かにな……。どれ……」 伸ばした腕や足の骨に歪みが無いかを見たり、クリップ状の器具を指や手足と足首に装着する。 タブレットに映し出されるデータとも見比べ、ふむふむと頷く。 「歪みは無いし、…………骨密度も申し分ない。 筋肉に痛みや軋みはあるか?」 「いえ……」 「捻ったり伸ばしてもか?」 「はい」 「腹や背中、腰はどうだ?」 「はい。何処にも痛みはありませぬ」 「そうか……。 内科や外科的な異常はなさそうだな。 あとは……問題のコレか……」 体の左側に散った桜の痣。 元々は親きょうだいの災難を肩代わりする度に増え、昨夜は守弥の火傷が消えた代償に浮かび上がった。 実際には見えるが医療器具を通すと見えないこれを、どう判断すべきなのか……。 「災厄を肩代わりした割りに、負の気配がない。 それに……」 心臓の真上に手を当てた。

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