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市内でも有数の品揃えを誇る書店で、咲良は感嘆の息をもらした。
「洋食もですが、和食の献立というのはこんなにあるのでございますか?」
「和洋折衷なものもあるからねぇ……」
「煮る、焼く、炒める、蒸す、揚げる……。
調理法だけではなく、素材も……。
世の中は坩堝(るつぼ)のようなものなのですね……。
勉強になりまする」
「お茶に合う菓子の本もあるよ、さくら」
「まあぁ……っ!なんと美しいのでしょう……っ」
作ったことはないが、写真と説明を見れば作れなくもない。
ウキウキしながら読み進める咲良の隣では、守弥が普段使いの献立本の中に然り気無く和菓子と洋菓子の本を紛れ込ませる。
『特に道具は要らないと言ってたが、隣は家電量販店だし、ハンドミキサーとオーブンと……アレとアレも買うか……』
勿論、量販店での買い物は実家ではなく本宮に配達させるつもりだ。
何の変鉄もないプリンすら極上の味わいなのだから、本気でとりかかったらどうなるのか楽しみで仕方ない。
普段独占欲を殆ど出したことの無い守弥だが、咲良の作るものは別だ。
そんなテンション駄々上がりの守弥を、ばあ様が興味津々の面持ちで見る。
『珍しいねぇ……こんなにウキウキしているのは見たことがないよ。
すっかり胃袋を掴まれてるねぇ……』
甲斐甲斐しく働く白兎と、胃袋をがっつり掴まれた黒狼に見えて、内心にまにまのばあ様であった。
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