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ふんわりと漂うコーヒーの香り。
棚やテーブルに並べられた可愛らしい生活雑貨。
今にも飛び立ちそうな銀線細工の小鳥。
窓から射し込む日差しに煌めく硝子細工……。
どれも仕上がりが綺麗なのだ。
「なんと……美しいのでしょう……」
喫茶店と雑貨屋が同居している店内は、初めてなのに何だか懐かしい感じがする。
「なんと不思議な……。
可愛らしいものや美しいものがたくさんあって、芳しい香りも……。
とても心が落ち着きまする」
ほうと息をつくと、奥からトレイを手にした70歳台の女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。
今日は可愛らしい方もご一緒ですのね」
咲良が持つ色彩に不審感も見せず、コロコロと鈴を転がしたように笑う。
「まるで、絵本の中から抜け出して来た雪ウサギさんのようね」
「えうう……?」
黒い痣が見えた筈なのに、ニコニコしながら咲良の頭を撫でる。
「色合いはウサギさんだけど、顔立ちがバタ臭くないから紗(うすぎぬ)やレースが似合いそうねぇ。
ばっちりコーディネートしてもよろしくて?」
「もちろん。
糸目はつけないから、肌触りのいい生地をばんばん使っておくれ」
「うふふ……。任せてくださいな。
さ、こちらに」
「ふえ?」
雑貨スペースにいざなわれ、採寸が始まった。
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