231 / 668

ふんわりと漂うコーヒーの香り。 棚やテーブルに並べられた可愛らしい生活雑貨。 今にも飛び立ちそうな銀線細工の小鳥。 窓から射し込む日差しに煌めく硝子細工……。 どれも仕上がりが綺麗なのだ。 「なんと……美しいのでしょう……」 喫茶店と雑貨屋が同居している店内は、初めてなのに何だか懐かしい感じがする。 「なんと不思議な……。 可愛らしいものや美しいものがたくさんあって、芳しい香りも……。 とても心が落ち着きまする」 ほうと息をつくと、奥からトレイを手にした70歳台の女性が出てきた。 「いらっしゃいませ。 今日は可愛らしい方もご一緒ですのね」 咲良が持つ色彩に不審感も見せず、コロコロと鈴を転がしたように笑う。 「まるで、絵本の中から抜け出して来た雪ウサギさんのようね」 「えうう……?」 黒い痣が見えた筈なのに、ニコニコしながら咲良の頭を撫でる。 「色合いはウサギさんだけど、顔立ちがバタ臭くないから紗(うすぎぬ)やレースが似合いそうねぇ。 ばっちりコーディネートしてもよろしくて?」 「もちろん。 糸目はつけないから、肌触りのいい生地をばんばん使っておくれ」 「うふふ……。任せてくださいな。 さ、こちらに」 「ふえ?」 雑貨スペースにいざなわれ、採寸が始まった。

ともだちにシェアしよう!