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「どうした? やっぱり具合が……!?」 「い、いえっ、なんでも……」 「何でもない訳ないだろう! 床に突っ伏してた位だ、苦しいのか? 心臓かどこかに痛みがあるか!?」 「…………っ」 焦燥した表情にズクリと痛みを覚えて、視界が滲む。 「違いまする。 痛くはありませぬ……」 「本当か?本当に痛くないのか?」 「は、はい……っ」 半分は本当で、半分は嘘だ。 体調が悪くて痛い訳ではない。 だが。 守弥を思うと胸がギシギシと軋む。 軋んで締め付けられ、浮き立って高鳴る。 引き起こされて、吐息が触れるくらいに密着しているのが嬉しくて。 心臓がドキドキする。 高鳴って、ギュウッとなる。 『ごめんなさい、咲耶……。 わたくしは、浅ましい気持ちを持ってしまいました……』 いま、この時間が止まったままなら良いのに。 誰にも罪を知られぬままで、こうしていられたなら。 『憧れや羨望などではなく……。 わたくしは、守弥さまに……守弥さまをお慕いしてしまっている……。 外を知らず、他人と関わることもなく、一人岩屋で儚くなる運命であったのに……。 咲耶の大事な方に対してあってはならない想いを抱いてしまった……』 「やっぱり痛むか?ばあ様から診て貰わないと……!」 「良いのです。 何処も悪くはありませぬゆえ……」 「なら、どうして苦しそうな顔になってる?」 「大事ありませぬ……。 ありませぬゆえ、今しばらく、こうしていて下さりませ……っ」 「………………っ?」 ひしとすがりつくと、背に回されていた腕に力が籠った。

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