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「…………」
まだ少し強ばっている背中を擦る。
背丈が伸びたのに、肉付きが未だ薄い。
何処か痛む訳ではないと本人は言うが、昨日のなにかが障っているかもしれない。
「大事ありませぬ……。
ありませぬゆえ、今しばらく、こうしていて下さりませ……っ」
何か不安になるものがあるなら、しっかり取り除いてやりたい。
咲良が安心できるように。
「ああ。
大丈夫だ。不安が消えるまでこうしているから」
「………………っ」
咲良が触れていた服をギュウッと掴み、うっすら涙を滲ませた瞳で見上げてきた。
「まことにございますか……っ」
「ああ」
「………………っ」
一瞬息を飲み、唇を結ぶ。
何気ない、日常にある仕草。
だが。
今は守弥の中の何かを煽る。
「あんまり下唇を噛むな。
切れてしまったら、血が出てしまうだろ?」
「っ、…………っ」
弱音をこぼさぬよう、一生懸命唇を噛む。
その仕草すらも守弥の庇護欲をそそる。
いや。
庇護欲ではない。
とうに気付いているのに気付かない振りをしていただけで。
こつん。
「………………っ?」
「こら、我慢するな」と言い聞かせるつもりが、気がついたら額と額をこつんと合わせていた。
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