504 / 668
・
「この布は、悪いものを封じる薬草を煮出した湯で染めてあります。
房飾りの玉も薬草の実…。
呪いからの影響を受けにくい構造です」
「呪い自体が、香久良を苦手にしているような口ぶりだったが…」
「多分、………いえ、いまは余計な詮索をしている場合ではないですね…。
香久良さんを苦手にしているのなら好都合とも言えます。
山向こうの村に辿り着くまで、なんとか堪え切ってください。
あ、これも持って行くといいです」
「これは…?」
「小分けにした薬草です。
角や皮の加工品より、これから寒くなる時期は薬草の方が歓迎されるでしょう」
いつも交易に出る時よりも多い量だ。
「………ありったけの薬草が入っています。
香久良さんなら、これを使えば呪い抜きをすることが出来るはず。
いまは残された時間が少なくとも、呪い抜きすればその期日が先延ばしに出来なくはない。
どうか、希望を捨てずに。
生まれた御子をどうするかは、貴方がた二人のお気持ち次第…」
「………」
生まれた子を我が子として育てるか、他の家へ託すか、それは護矢比古と香久良に任せるというのだろう。
ともだちにシェアしよう!