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「この布は、悪いものを封じる薬草を煮出した湯で染めてあります。 房飾りの玉も薬草の実…。 呪いからの影響を受けにくい構造です」 「呪い自体が、香久良を苦手にしているような口ぶりだったが…」 「多分、………いえ、いまは余計な詮索をしている場合ではないですね…。 香久良さんを苦手にしているのなら好都合とも言えます。 山向こうの村に辿り着くまで、なんとか堪え切ってください。 あ、これも持って行くといいです」 「これは…?」 「小分けにした薬草です。 角や皮の加工品より、これから寒くなる時期は薬草の方が歓迎されるでしょう」 いつも交易に出る時よりも多い量だ。 「………ありったけの薬草が入っています。 香久良さんなら、これを使えば呪い抜きをすることが出来るはず。 いまは残された時間が少なくとも、呪い抜きすればその期日が先延ばしに出来なくはない。 どうか、希望を捨てずに。 生まれた御子をどうするかは、貴方がた二人のお気持ち次第…」 「………」 生まれた子を我が子として育てるか、他の家へ託すか、それは護矢比古と香久良に任せるというのだろう。

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