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「俺は………、運良く呪いが抜けたなら、香久良に伝えたい。
今まで触れられなかった家族や親子の情や、思いがどういうものかを」
「是非ともそうしてください。
まだ眠りが深い内が良いでしょう。
そろそろ出立を」
「ありがとう。
必ず里から抜けて、香久良を送り届ける」
「お願いいたします。
私も後から母上をお届けいたします」
「すまない。
どうか、よろしく…」
布で包み、なるべく香久良に負担が掛からないように抱き上げる。
薬草園の裏手から一歩踏み出す。
しゃり……ぃん…っ。
しゃぁ…ぁ………ん。
星が降り注ぐような音が響く。
「これが警鐘音か」
「そうです」
『面白ソウダナ。渦ヲ巻カセテヤロウ』
喉で笑うしゃがれた声。
里のあちこちで、同じような音が響き始めた。
「さあ、行って下さい!」
「………っ!」
裏側から里の外周を掠めるように護矢比古は駆けた。
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