505 / 668

「俺は………、運良く呪いが抜けたなら、香久良に伝えたい。 今まで触れられなかった家族や親子の情や、思いがどういうものかを」 「是非ともそうしてください。 まだ眠りが深い内が良いでしょう。 そろそろ出立を」 「ありがとう。 必ず里から抜けて、香久良を送り届ける」 「お願いいたします。 私も後から母上をお届けいたします」 「すまない。 どうか、よろしく…」 布で包み、なるべく香久良に負担が掛からないように抱き上げる。 薬草園の裏手から一歩踏み出す。 しゃり……ぃん…っ。 しゃぁ…ぁ………ん。 星が降り注ぐような音が響く。 「これが警鐘音か」 「そうです」 『面白ソウダナ。渦ヲ巻カセテヤロウ』 喉で笑うしゃがれた声。 里のあちこちで、同じような音が響き始めた。 「さあ、行って下さい!」 「………っ!」 裏側から里の外周を掠めるように護矢比古は駆けた。

ともだちにシェアしよう!