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境内に満ちる神気をいつもより強く感じる。 だが、それは決して悪いものではない。 境内に住まう者をやさしく包み込むものだから……。 「本殿からの気配がいつもよりも強いのに、ほんわり優しく感じまする。 あたたかくて、柔らかで……」 「そうなのか?」 「ええ……」 「………………」 縁側に出て林の向こうにある本殿を見る。 常夜灯とは違う柔らかな明かり……。 いや、本殿自体が微かに淡く光っているような……。 「………?」 「守弥さまも感じられましたね……? 呼吸するように光が強くなったり淡くなったりしているのを」 「あ、ああ……多分」 「大祭の雰囲気を楽しんでらっしゃるのだと思います。 付喪神の皆さまもご一緒に召し上がれるよう、甘ぁい御菓子をお届けしましょうか」 「……?」 「おばあ様にお伺いしてみますね」 「お、おい」 衣紋掛けの巫女服を手に取り、咲良がパタパタと走っていく。 守弥も慌ててその後を追った。

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