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「本殿に夜中の茶会の差し入れ? こりゃまた珍しいねぇ」 咲良が拵えた塩大福を手に、ばあ様は目を丸くした。 「そうだねぇ。 いつもの年なら張り詰めた雰囲気だけど、今年は祭りの雰囲気を楽しんでるようだし、問題無いと思うねぇ。 市販のものじゃなく、咲良が拵えたお菓子なら喜んでもらえるかもしれない。 日付が変わる前になら大丈夫だよ」 「はいっ。 ありがとうございまするっ」 急いで台所へ向かった咲良の仕事は早かった。 予定よりも多く仕上がっていた餡や練りきり。 必要なものも一気に出来た。 なにより、宮に住まう付喪神や式神も手伝ったのが大きかった。 「こ、これは……っ!」 驚愕する守弥の前に並ぶのは、夏の花を象った麗しい菓子の数々……。 本宮の周囲の自然を彩った寒天や水羊羹。 そして。 「「うわわわわ!すご!これも御菓子か!?」」 周りを取り囲む付喪神が驚きの声を上げる。 「はいっ。 一口食べたらあまあまで、二口食べたらぷるぷるで、三口食べたらうっとりの、特大ばけつぷりんカラメルソース増量でございます」 「「ぷり~ん!!すげえっ!!うまそう!!」」 「本殿にお届けいたしますゆえ、皆さまもお手伝いをお願いいたします」 「「おうっ!」」 沢山の甘い御菓子の行列が出来上がった。

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