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◆◇◆◇◆ 参道にびっしり並ぶ出店からは、食欲をそそる良い香りが漂う。 氏子達が奏でる笛の音と太鼓の音も響いてきた。 夏の大祭、宵宮である。 市内の田畑に注ぐ水は全てこの山からの伏流水であることから、これから迎える収穫の秋に向けての五穀豊穣を山の神に祈る。 勿論、収穫期を終えた頃には外宮で秋の大祭が行われるのだが。 夏の大祭の時期だけ本宮の松の木に起こる不思議な現象があり、年頃の女子が多くやって来る。 「三ツ股の葉でございますか……?」 舞いの準備に向かう道すがら、咲良は驚いて目を丸くした。 「そ。毎年どの木になるかは分からないんだけど、三ツ股の松葉を拾って輪っかにして身につけると良縁に恵まれるって、まことしやかな噂があってねぇ……」 「まあぁ……っ」 「木になってるのをもぎ取るのは反則。 あくまで落ちてる葉じゃないと効力を発揮しないんだって。 レアなんだよ~。 なかなか見つからないんだから」 「俺も見たことがない……。 どれも二本葉の松だけなんだが」 「そうなのですか?」 「うん」 「ああ」 本当にあるのか眉唾だと言う守弥と時雨。 咲良が何とはなしに視線を落とす。 「………………ございましたが……」 「「ええ!?」」 掌に乗せて二人に差し出す。 「本当に三ツ股……」 「迷信じゃなかったのか」 「本当にあるのですね……」 「懐紙に挟んで身につけときなよ。 きっといいことがあるよ、咲良」 「効果があるのは女子の皆さまなのでは……?」 女子よりも淑やかで可愛らしいのだから、多分効果があるんじゃないかという突っ込みは抜きにして、「多分、半分位は御利益があるだろうから持っておけ」と言い聞かせた守弥だ。

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