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舞い奉納も終わり、一息つくと氏子総代と息子が顔を出した。 「お疲れさまでございます。 いやいや、見事な奉納舞いでしたなぁ」 「花吹雪があったのは数百年振りらしいですよ。 いやいや、神様も粋な計らいをなさる」 「ばばも初めて見たからねぇ」 「鷺舞いの名手は……?」 「さくら、こっちにおいで」 「え、あ、あの……っ」 「いいからいいから」 「はわわ……っ」 衣裳をつけたまま、ばあ様に引っ張られる。 「なんと……っ、外国のお方でしたか」 「何処で舞いの勉強を?」 「いや……あ、あの、……」 「この子はさくら。 守弥の対の姫だよ」 「……なんと!界渡りの姫でしたか……っ!」 「雪の精のような可愛らしさ……っ。 なるほど、ご祭神が祝(ことほ)ぎの花を散らす訳だ」 フムフムと頷くふたりに、咲良はひたすら恐縮するしかない。 ばあ様は守弥の姫だと言い張ったが、自分はあくまで代役だ。 なんと釈明したものかと試案していると、ばあ様と時雨がパチンとウインクしてきた。 『…………!』 氏子総代の前で守弥の花嫁だと話したということは、内外に既成事実として公認されたということ……。 これで、封印が解けて咲耶を呼び寄せたとしても、花嫁の立場を入れ替えることはできない。 『守弥さまのお気持ちは……』 先手を打たれた形で守弥がどう思っているのか気になるが、それよりも咲良の思案を満たしていたのは……。 「おばあ様、厨房をお借りしてもよろしいでしょうか」 甘い甘い菓子の数々であった。

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