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扉の前で気持ちを立て直し、咲良は出来上がった菓子を本殿の奥に届けた。
一緒に持って来てくれた付喪神たちに礼をのべ、静かに扉を閉める。
ここからは神様と式神、付喪神の茶会。
邪魔をせぬよう、足音にも気を付けて本殿から離れた。
窓ガラスに映るのは、泣き腫らした目をした自分。
トテトテとあてもなく歩いていると、いきなり視界が変わった。
「…………っ、…………っ!?」
隣に時雨がいるということは、自分を抱え上げたのは守弥で間違いない。
「も、守弥さま……?」
「チビと一緒に露天に入れ。
こっちは内湯に行く」
「う、うん」
「…………?」
内湯と露天風呂は脱衣所も別だ。
ある程度の話を聞き出す為に釘を刺したのだと悟り、咲良は口を挟まずにいる。
「邪魔はさせないから、ゆっくりね」
「ああ」
「………………」
咲良を担いだままの守弥を、時雨が神妙な面持ちで見ている。
すれ違う瞬間、咲良にだけ見えるように『ごめんね』と唇が動いていた。
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