「もうひわへ……おにゃいまへぬぅ……っ」 だばー。 「鼻を摘ままれてて言葉がおかしいのか、逆上せて呂律がおかしいのか、どっちなんだ……？」 「熱があるんじゃないよねぇ？」 「まさか…………………、あ″……額が熱いかもしれん」 「体温計があるよ、守弥」 「あ、ああ……」 ばあ様から体温計を受け取り、早速熱を測る。 「………………」 ピッ、ピー……。 小さなシグナルが鳴り、表示を確かめる。 「…………37度４分……微熱だねぇ……」 「……咲良、熱を出して寝込んだことはあるか？」 「ねちゅ……？」 少しトロンとした瞳で暫し考え。 「ん……、ねろんらころ、ないれす」 呂律が回らないまま答える。 「風邪とか、ひいたりしたことない？」 「…………のろがいらいろにゃ……あいまひたら……」 「何て言ってるのかなぁ……？」 「多分、喉が痛いのならありましたと言ってるんだと思う。 …………軽い風邪の症状はなったことがあるが、本人の記憶上は熱がでたことは無いって事なんだろう」 「兄さん、よく分かるねぇ……」 「ん？まー……、大体……な……」 延髄の辺りを冷やしながら、そろそろ鼻血が止まったかどうか確かめる。 垂れてくる様子はないが、目の焦点も少しおかしいような気がする。 「疲れが溜まったか、ド緊張が響いたかしてるんだと思う。 取り敢えずこのまま寝かせるか……。 寝入ったらメールするから、チビ達はその後になるかな……」 「そうだねぇ……。 さくらと一緒の部屋に寝るって言ってたけど、調子が良くないなら無理にはさせない方がいいと思うねぇ。 布団はばばの部屋に運んでも構わないし。 さくら、具合が悪いときは、ちゃんと守弥に言うんだよ？」 「あう……、……おやしゅい……にゃしゃ……ま……」 三つ指をついて挨拶したところをみると、おやすみなさいと言ったようだ。 なんとか立ち上がるが、覚束無い足取りはあまりに危なっかしく、そのまま守弥が横抱きにする。 「氷嚢と冷却シートを持ってついてくね」 「あ、ああ。頼む」 「うさこ、ゆっくり休むんだよ？」 「はうぅ……」 心配げに覗き込む一人一人に挨拶をするのを待って、守弥と時雨は居間をあとにした。