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床に頭から叩きつけられる。 その瞬間。 ぽふんっ。 「………………………………ふえ……?」 「大丈夫か?」 何処も痛くない。 叩きつけられる前に守弥が受け止めてくれていた。 目の前にあるのは、心配そうに覗き込む闇色の瞳。 「咲良?何処か痛むか?」 何ともないと言えばいいだけなのに、舌が縺れて言葉が出ない。 いや、言いたいことがいっぱいあって、何から言えばいいのかもわからない。 「………………っ」 じわっと視界が滲む。 間近で見るといつもドキドキする守弥の瞳すらも滲んでしまって。 それすらも悲しい……。 「やっぱり何処か痛いか……?」 「…………っ」 言葉が出なくて、かぶりを振る。 ペタンと座ったままの咲良が余計に具合が悪くなってしまったのかと、守弥はもう一度覗き込む。 「咲良?」 「…………っ、…………っ、っ」 何を、……何から言えばいい? 守弥の姫乞いをぶち壊しにしたこと。 大好きな咲耶の縁談を台無しにしたこと。 花嫁になるはずだった咲耶や家族の記憶を消して、繋がりを断ってしまったこと。 守弥に心配や迷惑をかけてしまってること。 謝っても謝りきれないことばかり。 それを全部口にすれば楽になるかと言えば、けっしてそうではなくて。 胸が軋んだ。

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