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…………しゃ……ぁん……
「…………?」
しゃり……ぃん……
「……鈴……?」
辺りを見回しても、誰も鳴らしている気配はない。
「綺麗な音……」
「本当だ……」
しゃ……ぁあん……
……キ……シ…………
可憐な鈴の音に混じり、何かが軋む音がする。
「………………うさこ……?」
キシ……キシキシ……
守弥に凭れて涙を零す咲良。
体勢は変わらないのに、膝や肘の位置が変わっているような……。
「ばあ様……っ?」
「うさこが……!」
『分かってるよ。静かに……』
声を抑えるように指示をする。
微かな鈴の音に誘われるように、キシキシ軋みながら、咲良がゆっくり……ゆっくり成長していく。
『守弥、声をかけたら駄目だよ』
『ああ……』
腕の中で少しずつ背も伸びていく。
年相応の姿になりたいという意志が形になっているのだろう。
軋む音が治まるまで、守弥は辛抱強く待った。
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