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一時間が経ち……。
鈴の音も軋む音も止んで、守弥が一息ついた。
「咲良……、大丈夫か?」
「…………はう……」
まだ少し焦点の定まらない瞳が見上げてくる。
「痛いところはあるか?」
「……ん…………」
ゆっくりだが、かぶりを振る。
目線の高さが変わったところから推察できるのは、一時間くらいで10センチほど身長が伸びていることくらいだが……。
「朝イチで鬼夜叉のところで診てもらうか……」
「明日、診察が終わり次第来てくれるようだよ。
ばばがメールしといたからね」
「あ、ありがとう、ばあ様」
「可愛い曾孫嫁だからねぇ。
さくら、今日はゆっくり寝るんだよ?」
「はう…」
「途中で具合が良くないときは、必ず兄さんに言うんだよ?」
「……は、はう……」
「寝冷えは良くないから、浴衣かパジャマにするか……」
「兄さん、背丈が伸びちゃったから寸法が合わないかもよ……?」
「………………マジか……。
咲良、俺の甚平で我慢できるか?」
羽織った甚平の袖に腕を通す咲良が、コクコクと頷く。
甚平の上だけを着て、満更でもないというより嬉しそうに見える。
………………物凄く。
「ばばには、仕方なくとか我慢するっていうより嬉しそうに見えるねぇ……」
「なんか、すっごく嬉しそう……つか……」
『裾!裾から覗く脚と絶対領域~!!
理想としては兄さんの白ワイシャツにニーハイだけどさ、うわ、大きくなった咲良って、むちゃくちゃヤんらしい~!!
ふおおお!鼻血、鼻血ぃっ!』と、内心荒ぶる時雨であった。
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