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………………一方。
居間に戻ったばあ様と時雨は、一息つきながら成長した咲良の様子を思い返していた。
年相応の背丈。
病的ではないが、守弥の体格と絶妙なバランスの取れた華奢さ。
通った鼻筋とぷっくりとした唇。
甘さを残した目もとと、子供っぽさが抜けて大人びた表情。
どれを取っても、守弥の好みそのままに……。
「咲良が兄さん好みの姿になってくれて、正直ホッとしたなぁ……」
「そうだねぇ……。
こないだ街に出た時に見た、マッチョや気色の悪いびじゅあるにならなくて良かったよ」
「想像したくないよ、ばあ様」
「「おおう……っ」」
ぶるぶる。
軽く想像して、震えがきたようだ。
「あのさ……」
「ん?」
「……………ばあ様が来る前に、咲良が兄さんを探してるような仕草をしてさ…………目を覚ましてベソかいたんだけど……。
″おー……しゃ″って言ったんだよね」
「………………」
「呂律が怪しいから確定じゃないんだけど、″守弥さま″って呼んでたんじゃないかなって思うんだ」
「そうかい……。
寝ている間に傍から離れてしまったのを悲しく思ったんだねぇ……」
「うん。
多分だけどさ、寝ぼけてて兄さんが咲耶のとこに行っちゃったって思ったのかもね……」
「………………」
咲良にとって、守弥の存在が大きくなっている。
それが姫乞いの成功へと繋がっているならいいのだが……。
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