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「ばあ様、聞いていいかな」 「ん?」 「……姫乞いって、成功例が無かったよね」 「…………っ」 一瞬息を飲み、暫し思案する。 「なんで兄さんは引き受けたのかな……。 禁域の……石になった姫達や、禁書のことだって知ってて……どうして……。 無理矢理とか強制じゃないんだよね?」 「………時雨が反対したように、ばばも止めたよ。 連れてきた姫が石になれば、対の鬼の命も大きく削られてしまうかもしれないことも伝えた」 「じゃあ、なんで……?」 「″解らないけれど、断る理由がない″って言ってたねぇ……」 「え……?」 「顔も性格も知らない相手と恋愛関係を構築するのは難儀なのも、魂欠けの自分の方が石になる可能性が高いのも、十分に解ってる。 でも、考えに考えても断る理由がない、ってね……」 「………………」 自分の方が石になる公算が高いのも知っていて、何故……。 時雨と同じ疑問を、ばあ様も持っていた。 「時雨も対の石を握って生まれてきたように、守弥も対の石を持って生まれてきた。 みんなそれぞれ形が違うし、姫乞いの兆候が出るか出ないかも違う。 時雨の石は綺麗な真ん丸の珠だったねぇ」 「あ、うん」 直径2センチにも満たない小さな石は、滔々と水を湛えた泉の色。 「兄さんのは、ほんのり白かったんだよね」 「そうだねぇ……。 白っぽくて何かの蕾のような形をしてた。 それが、花が咲くように開いて色づいたんだよ」 「え……?」 「2年半くらい前になるかねぇ……。 ほんのり白かった蕾が少しずつ色付いてきて……、ゆっくりゆっくり開いていったんだよ。 まるで、桜の花が咲くようにね……」 「…………!」 「大抵は対の石に現れる兆候は数日で落ち着くのに、守弥の石の変化は半年以上かかった。 その間に、思うことは沢山あったと思うよ……」 「それで、兄さんは石を見せなくなったんだ……」 以前はよく見せて貰っていた。 ここ数年、見せなくなったのはそういうことだったのか……。 合点がいった。

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