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◆◇◆◇◆
……翌朝。
完全に明けきれない時間に咲良は目覚めた。
昨夜の酩酊に似た変な浮遊感はないが、下腹を中心に体が重怠い。
熱もまだ少しあるような気がする。
『わたくしは、どうなってしまったのでしょう……』
朧気ながら、キシキシと音を立てて背が伸びたのは、なんとなく覚えている。
『今度こそ、気色が悪いと思われるのではないでしょうか……』
起き上がって鏡を見てみようか、いや、やはり怖い……と、堂々巡りな状態になる。
『年相応の骨格であれば、今までのような服装も難しくなりまする……。
この髪も不自然になってしまうでしょうし、ちゃんと短くして男子らしくしなくては……。
以前、男同士の夫婦も珍しくはないと仰有いましたが、目覚めた守弥さまが呆れるような体格になっていたらどうしましょう……。
ゴツくてくねくねしているから、気持ちわるいと言われてしまったら……。
あああ…怖くて仕方ありませぬ……』
考えれば考えるほど、おそろしい想像ばかりしてしまう。
いっそ、このまま朝が来なければ良いのにと思うくらいに。
そうっと起き上がり、両手や腕がゴツゴツしてないか確かめる。
「………………」
今度は脚を。
「………………」
一応、変なゴツゴツ感はなく、脛毛もない。
顔を両手でなぞってみる。
ザリザリ、チクチクといった感触もない。
いつものように、つるんとした肌触り。
『背が伸びて……、でも、男性特有の特徴は……無い…………?
もしかして……』
そうっと体勢を変え、ベッドから降りようとする。
「………………?」
何かに引っ掛かったように動けない。
視線を移すしていくと、銀髪を指に絡めた守弥の手があった。
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