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ズキ。
ズキン…。
ギシギシ…。
ギリギリと締め上げられる感覚はずっとある。
四肢を辿り、心臓めがけて突き進もうとするもの。
『オ前ハオモシロイ。
ダガ、我ノ侵食ハモウ…』
「分かってる。
あと少し…。あと少しで境に…」
ひう…、トッ!
「………か、は…っ」
「も、護矢比古…っ!?」
風を切るようにして飛来したそれは、護矢比古の背に突き立った。
ちょうど太い木の根を越えようとしていた足がたたらを踏み、均衡を失った勢いそのまま斜面を転げて、紋様が刻まれた岩の下へと護矢比古は倒れ込んだ。
「ぅ…っ!」
ドサリ。
ずぶぅ…っ。
地面に香久良が叩きつけられないように庇ったあと、鈍い音が響いた。
「ぐ…っ」
「もり……、えっ!?」
構わず起き上がった護矢比古だが、胸元にも赤い染みが浮き上がり始めている。
「が…は…っ」
ごぼりと、唇から鮮血が迸った。
「い、や、うそよ…!」
「逃げ…ろ…」
「一人でなんか逃げられるわけないでしょう!?」
警鐘音は消えた。
里の境を越えた証だ。
なのに護矢比古をここで置いて行けるわけなどない。
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