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「この先の村に、…渡りを…つけてあるんだ…、早く…行け…」
「喋っちゃダメ!ああ…血止めに使えるものは…っ」
「お前を、くるんでいた布に、薬草や種が…入ってる。
それを持って、村に向かえ…。
俺も、息が整ったら…行くから…」
「馬鹿なことを言わないで。
逃げるなら一緒に決まってるわ!……血止めと…それから…」
「早く逃げろ…」
「一緒にって言った!」
選んだ薬草を傷口に当てて、裂いた布で固定する。
それから、薬草を鷲づかみにした手に護矢比古から貰った飾り紐を巻き、更にその上からもう一本裂いた布を巻き付けた。
「社のなかでも一番いい薬草を使ってる。
これなら少しでも…」
「………逃げ…ろ」
「それだけは聞けない」
追手の声も足音もまだ遠い。
いまの内に少しでも呪いを抜く。
香久良は護矢比古の心臓の上に手を重ねた。
するり…。
護矢比古の中でぬたりとしたものが鎌首をもたげた。
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