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しゅううう…っ。 ゾゾゾ…っ。 突き刺さった靄は、皮膚の下を這いずり回る。 『生キガイイ…甘イ…』 ギリギリと締め付ける痛み。 これを護矢比古は耐え続けて来たのか…。 『痛い…痛いなんてものじゃないわ…』 追っ手の気配が近づいている。 確実に仕留めにかかる前に、引き付けてしまわねば…。 「香久…良…、もういい…逃げろ…」 「ダメよ。わたしは自分で出来るだけの事をしたい…」 矢が刺さった場所も、どれだけの深手かを考えても、護矢比古が助かる確率は下がり続けている。 その状態で置いては行けないし、置いていくつもりもない。 元々社に隠されるように生きてきた自分は、里から見た場合にどういう位置付けになるかを思えば、護矢比古より自分のほうが危うい立場なのだということも分かっている。 この先にある村に話が通されているとしても、自分が逃げ込んだ事でどんな災禍が起こるか…。 『単純ないさかいで終わればいいけど、もし…その村の人達が皆殺しにでも遭ったら…』 社の奥向きで育った自分にも分かるほど、里の掟は固く厳しい。 そして、冷酷なものだと。 逃げても逃げなくても八方塞がりな状況に変わりはない。 諦めてしまっている訳ではないけれど、せめて護矢比古の行く末に闇の痕跡を残したくない。 「逃げろ…頼む…」 「わたし一人で?それをすると思うの?」 「………」 「いたぞ!女も一緒だ!」 「香久…!」 「え?」 目の前の景色がぐるりとかわり、視界は護矢比古だけになった。 ずぶり。 「…………っ!が、は…っ」 「も、り…?護、矢比古…!?」 さっきとはけた違いの量の血が、胸から伝う。 胸だけではなく、肩や腹からも。

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