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「大…丈夫か…?」 「うん…っ」 心配そうに覗き込む護矢比古に、精一杯の笑顔で返す。 「わたしは大丈夫。大丈夫だよ、護矢比古…」 「そうか…」 額に触れる唇。 少しずつ鉄臭が濃くなり、脇腹に灼熱にも似た感覚があるけれど、香久良は気づかせないように微笑んでみせた。 「ごめんな。 自由に、してやりたか…」 「いいよ、十分してもらえた」 「いつか、また…出会えるから…」 「…うん」 空いた片手を背中に回す。 「必ず、…迎えに行く…」 「待ってる…、待ってるよ…わたし」 「きっと、だ」 ざしゅ。 どすり。 ずぶ…っ。 「…………香久…」 力無く笑んだ後、瞳から光が失われていく。 「あと、もう少し…なのに…」 拳に絡みついた靄が、薄い皮膚の下から骨へと侵食しているのに。 香久良の意識はもう、ふつりふつりと途切れ始めている。 「お願い…っ、あと…」 「まだ動いてる、しぶとい女だ」 「がっちり覆ってて、引き剥がせないぞ」 「もろともやっちまえ」 ずぶ。 「……ぅ…」 どすり。ずぶっ。 「………か…は…」 ふつ。 香久良の意識も其処で途絶えた…。

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