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姉の咲耶と退院してから形ばかりの面会には来るものの、両親は咲良を恐れて触れることすら出来なかった。
災禍が及ぶ訳ではないと知っていても、黒い痣の不吉さにどうしても怖さが先に立って。
小さく生まれた咲良は危篤に陥ることもなく、少しずつ成長をしていった。
この時期のNICUには極小未熟児の子供もいたが、不思議なくらいに穏やかな日々が続いていた。
容態が急変することが減り、危機的な状況を脱する子も出たほどで…。
スタッフの中には、咲良の痣が増える訳に気付き始めている者もいた。
静かに更ける夜。
電子音が響く部屋にそうっと訪れていたのは、宮司と付喪神や式神達だった。
隠形しどれだけ静かに扉を開けても、咲良はいつも目を開ける。
最初は警戒していたようだが、いつの間にか訪問を待ちわびるような様子に変わってきていた。
「ちっさいな…」
「ええ」
「赤ん坊だけどさ、すんごい力を感じる」
「………起源の娘のあとは、ずうっと神仏に仕え続けて来ましたからね…」
「外に向けた力じゃないな。
殆ど体の中にある怖いのを抑える為に使ってる」
「………恐ろしいくらいに力があるけど、なんかさ…可愛いよな」
「可愛いです」
「うん」
「咲良、お前、もうちょいしたら俺らの住むとこに来るんだぜ~?」
頬に触れると、嬉しそうに目を細める。
「夕陽の色の目…綺麗だなぁ」
「優しい命の色だよな」
「山の奥の宮だけどさ、皆がお前を待ってる。
いっぱい遊ぼうな」
「えぅ…」
差し出された手をキュウッと握る手は、まだまだ小さかった。
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