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掌の上で、玉は柔らかく明滅する。
トクトクと、鼓動を刻むように。
「うわ…、綺麗…」
「すんごい力だよ」
「おこした火を大きくするように、もう少し息を吹き掛けて下さい」
「あ、ああ…」
何度か息を吹き掛け、様子を見る。
淡い光が安定し始めて、玉の周りに小さな風の渦が生まれた。
「ふむ…。
やはり対の鬼の息の効果は絶大ですねぇ。
さ、周りの風に合わせてもう少し」
「……ああ…」
渦を助けるように息を吹き掛けると、玉の色が乳白色から薄い桜色に変化していく。
何かを抱っこするようにしていたばあ様も傍に座り、変化の様子を嬉しそうに見ている。
「頃合いですかね」
「ふむふむ……そろそろかねぇ…」
ばあ様の手元を見てから、宮司は空をパチンと弾く仕草をした。
「どうです?」
「うまく行きそうだねえ」
「そうなのか?」
にんまり微笑む二人に、守弥は首を傾げる。
ばあ様が咲良の胸元に何かを持って来て重ね、宮司もうんうんと頷く。
「ええ……。
いいですか、ここからは対の鬼にしか出来ないことです。
姫の帰還を強く望むこと、永遠に対として愛し抜くことを強く念じながら、その玉を咲良さんの心臓の場所に触れさせて下さい」
「わかった」
言われた通り、強く念じて心臓の真上に触れさせた。
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