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皆が固唾を飲んで見守る中、守弥は強く強く念じる。
『咲良、戻って来てくれ…!』
風を纏った玉から、次第に光の帯が伸び始めた。
しゃあああ…ん。
「もっと強く念じるんです」
「ああ」
掌に意識を集め、更に強く念じる。
しゃあ…ああぁあ…ん。
帯は少しずつ淡い色合いを持ち、紗のようにふわふわと舞う。
「………さくら」
「さくらがいる」
「…ホントだ…」
石になった咲良と守弥の間に、姫乞いの儀式の頃の様な幼い姿の咲良がうっすら見えた。
「……咲良さんの魂魄です。
力を使い果たして弾き飛ばされていたのですよ。
このまま取り残されては大変ですからね」
「さっき何か弾いてたのって…」
「さりげに逃げようとしたので、デコピンしておきました」
「…で、デコピン…」
魂魄を気絶させるのはどうかとは思うが、最善の事なのだろうと皆は思うことにする。
「ばばの近くに来ていたからねぇ…。
お膝抱っこしてたんだよ。
慌てて何処かに行こうとするし、下手に術をかけて拗らせたくなかったんだよ」
「そっか…」
「ちぃちゃくなってたんだな…」
「守弥さんの意識が固まれば、………あぁ、もう少しですね」
ふわふわと宛てもなく漂っていた紗が、明確な意思を持ったように咲良を取り巻いた。
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