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ピシ。 ピシピシ…。 鈴の音に混じって、割れるような音がする。 「ばあ様、これは…」 「心配ないよ。大丈夫」 ヒビが走り始めたのは、咲良に巻き付いた紗だ。 「さくらには、傷ひとつつかない」 「………」 キシ。 キシキシ。 ピシピシピシ…。 「うさこの腕のとこが…」 「足にも…」 意思を持つかのようにヒビが走る。 軋りながら。 少しずつ。 「戻って来い…」 「帰ってきて、うしゃこ!」 「さくら!」 「がんばれ…!」 「もう少しだぞ!」 掛けられた言葉に応えるように、ヒビは全体へと広がっていく。 キシキシ…ピシピシ…。 ピシピシピシ…キシ。 ………ピキン。 「咲良!」 かしゃあああ…んっ。 しゃあああん。 しゃりぃ…ぃぃいん…っ。 咲良に絡み付いていた紗は、弾けて、砕けて落ちて散らばった。 「……………さ、くら…?」 無機質な色ではなく、煌めきをはらむ銀髪。 淡い色の肌。 ぷっくりとした唇。 恐る恐る髪に触れると、極上の絹糸のような音がした。 「わた…くし…」 「おかえり。咲良」 「守弥…さま…」 ぎゅうっ。 息が出来ないほどにきつく抱き締められる。 「守…っ、もり、や…さま…っ」 「咲良…っ」 自分のしでかしたことの大きさ。 起源の香久良から今の自分までを、危険を冒しながら辿った守弥への申し訳なさ。 心配を沢山かけ、迷惑をかけ、苦しめてしまった。 「申し訳、ありませぬ…っ。 守弥さま、わたくし…、わたくしは…っ」 「いいんだ。戻って来てくれたから、な…」 ひときわきつく抱き締められ、大好きな守弥の香りが鼻腔に満ちて。 咲良は大粒の涙をこぼした。

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