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ぎゅうぎゅうと抱き締めて貰うのが嬉しい。
「おかえり」
「…っふ、えぇ…」
石になってからずっと失われていた感覚が一気に戻ってきた。
抱き締められて胸が沸き立つのも。
額に触れる吐息も。
瞼に落とされる唇も。
愛しい守弥の香りで鼻腔も肺も満たされるのも。
「っう、…ぁ…」
「………咲良」
「っん、…んぅ…」
名前を呼ばれて、耳が熱くなるのも。
「良かった…還って来れて」
「んぅ…」
唇をやわやわと啄まれて、頭の中が痺れてしまうのも…。
「守弥さま…」
「ん…?」
「守弥さま…っ」
「うん…」
…ずっと失われていた。
「申し訳ありませぬ…。
わたくし…、わたくしは…っ」
言いたいことは沢山ある。
ありすぎて、何から言えば良いのかさえ分からないくらいに。
「いいんだ」
「んぅ、…っでも…」
「咲良が俺のところへ戻って来た。
それで十分なんだ」
「っ、……わたくしは…っ」
「いいんだ。
もう泣くな…。目が溶けてしまうぞ」
「っ、っふ…」
苦しくて見上げると、穏やかに微笑む表情の守弥がいた。
柔らかい笑みから甘い表情に変わっていく。
「………っ、え、あ…」
全身の血流が一気に逆巻いたような気がする。
「……っ、……っ」
鼓動は、こんなに大きな音だったろうか。
寒い感覚なのに、顔だけが物凄く熱くて。
「はっ、反則でございます…っ」
「………?」
石になったあの日よりも凛々しく男振りを増した守弥に、咲良の鼓動は逸るばかりだ。
「………良く分からないが、ちゃんと戻って来たからな。
べったべたに甘やかすし、竜絡しまくってやるから覚悟しろよ」
はくん。
「ひあ!」
首筋を軽く噛まれて、咲良はビクリと身を震わせた。
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