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痕跡の玉から伸びた紗に包まれ、取り込まれていく魂魄。
ヒビが入り、紗が弾けた。
石化が解けて、守弥が抱き締めて…。
「ほら、ほらここ!」
「ほう…」
守弥を見上げて羞紅したところだ。
瞳が潤み、唇もぷっくりしている。
以前は少女めいていた容姿だったが、そこに年頃の少年特有の硬さも加味されたようだ。
単に可愛らしいのではなく、危うさや色香が漂う。
二人の視線が合った瞬間、守弥の喉仏が大きく動いた。
「おばば、ここを確認して貰えるか?」
「ん?どうしたね」
荊櫻に促されてばあ様と宮司も見入る。
「ほら、ここ…。ここだ…」
「ほほう…。
所謂ロックオンですねぇ」
「これは…。ふむふむ…興味深いよ」
「多分、うちの次男と同じくらいのやつだな」
「小鬼のあれかい?」
「…なんと…。
こんなに強いのは私も初めて見ます」
「「なぁるほどねぇ…」」
ふむふむと頷く3人が、そのまま守弥に視線を移す。
「……なぜ、そこで俺を気の毒そうに見るんだ」
「いや、本当にヤバイぞお前」
「姫の本領発揮ということになりますかね」
「全力で来るねぇ…これは」
訝しむ守弥に対して、3人はニヤリと笑う。
「………対の鬼が望む姿に転変していくのが姫だが…。
見上げられた瞬間、頭の中が真っ白になったろ?
お前、本っ当に式まで堪えきれるか?」
「持ってかれてますねぇ…。
見事なくらいに」
「持ってかれたねぇ…」
「…それは、……ぜ、…善処する…」
「うちの長男と次男の番はかなりめろめろに落とされたからな。
番と対の違いはあっても、受け身の方が無意識に誘う。
一族以外の人間であれだけの魅了眼はそうそういないぞ」
「ばばも初めて見るねぇ…」
「一見亭主関白に見えますが、最終的に咲良さんが無邪気に尻に敷くパターンじゃないですかねぇ…」
「…………」
たしかに、上を向いた瞬間の咲良に守弥は息を飲んだ。
石になる前よりも、守弥の好みのストライクゾーンど真ん中の姿になっていた。
堪らずに首筋を甘噛みしてしまっているし、自分の中では手を出していい相手なのだと認識し始めてもいる。
なるほど…。
ばあ様と宮司もだし、荊櫻までが意味ありげな笑みを浮かべる訳だ。
式まであと半年弱。
守弥の忍耐力が大きく試されるようだ…。
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