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「いきなり姿を消してから、随分言い聞かせるのが上手になったねぇ…。 いいのかい? 夜刀比古の気持ちがザワついたりは…」 「相変わらず痛い所を突きますねぇ…」 すよすよと眠る咲良から少し離れての会話だ。 「さくらの願いが叶うのはいいけど、後々辛さで壊れたりしないのかい?」 「………夜刀比古は香久良を失って絶望した直後に返しの風で死にました…」 「………」 「香久良がずっと神仏に関わる人生を選び続けたように、夜刀比古も香久良を助けたい一心で後を追う人生を選ぶようになったんです」 「………」 「思いを伝える訳にはいかない、邪魔をしてはいけない。 罪の意識に苛まれ続けて来ました。 それが、咲良さんの言葉で報われた気がしたのですよ…。 ″宮司さまはご飯をいつ食べるのですか?いつも修行ばかりでいつ休まれるかも…!これではお体を壊してしまいまする!″と、案じてくれましてねぇ…」 「……そうなんだねぇ…」 「ええ…」 寝食も忘れて修行に明け暮れる宮司を案じ、『大きくなったら宮司さまのお嫁さんになりまする』と言われた瞬間…。 ああ、もういい…と。 これで全部が報われたような気がしたのだ…。 「未消化の恋はしっかり始末がついております。 余計な横やりは入れたりしません」 「………それで、いいのかい…?」 「ええ。 石化の試練も無事に通過出来たことですし、あちらに戻ったら見合いでも、と…」 「そう…かい…? また、いきなり消えるとかはないんだね?」 「ええ」 元々、周りに気を使うところがあったが、足かせが無くなったことがどうなるのかがばあ様には気がかりだ。 「大丈夫ですよ。 変に思い詰めたり失踪したりはしませんから」 「………」 「ものは相談ですが、おばあ様…」 「ん?」 「お宝の交換をしませんか?」 「ほ…?」 宮司が懐から出した小さなケース。 うっすら中身が透けて見え、ばあ様は目を輝かせた。

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