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「さ、こちらでの様子を教えて下さい」 「あ、ああ、そうだね…」 時雨が纏めてくれたタイムラプス動画や、祭りでの舞いの動画を再生する。 「……少しずつ伸びてってますねぇ…。 視点が固定されてるから、しっかり分かります。 …ふむ…。 ほぉ…。ご祭神の祝福ですか…。 これはなんと…大盤振る舞いですねぇ…」 「凄かったんだよ。 見事な花吹雪でねぇ…」 再生しながら、空のUSBにデータをコピーしていく。 「ほほう…。洋服も似合ってますね」 「そうなんだよ。 バランスが良いというか、手足もスラ~っとしてるからねぇ。 着るものを選ばないくらいで…」 「………とても可愛がって貰えていたのですね…。 彼方にいた頃よりも表情が豊かになって…」 「さくらは、初めから表情が豊かな子だったよ。 おとなしくしていよう、他人を困らせないようにしようって、気遣っていただけで…」 「…そうかも知れませんね…」 早世すると定められていたから、殊更大人でいようとした。 年相応の振る舞いというより、寧ろ…。 「子供らしからぬ落ち着きすらありましたからね…」 あちらの式神も付喪神たちも、咲良を年相応の子供として扱ってはいた。 だが、咲良は忌み子としての役割を自覚しすぎていた…。 「こっちに来た後に、守弥から言われた言葉があったって聞いたねぇ」 「………」 「自分を大事にしろ。後回しにばかりするな。 身代わりを引き受けたり、犠牲になるのを疑問に思わないのは可笑しい。少しは断れ。 自分を優先する事を覚えろ。 制限ばかりを押し付けられて生きるのは、明らかに人権侵害だ。 俺は認めない。 我が儘に振る舞え。やりたい事をやれ。 言いたいことを言え。行きたい場所に行って、思う存分自分を開放してみろ。 甘えることも覚えて自分を優先しろ…ってね…。」 「………」 「守弥に言われて、自分は子供らしくないことにようやく気づいたって…。 戸惑ってはいたけど、自分の有りかたを考えるきっかけになったんだねぇ…」 「そうですか…」 魂の核と重い運命を背負って生まれた咲良。 香久良から続く長い旅路を終わらせる最後のチャンスでもあり、宮司も送り出すに当たって案じていた。 「守弥さんだったからこそ、ですね」 試練が始まる迄に咲良と思いを通じさせ、帰還を成し遂げた。 送り出してよかったのだ…。

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