534 / 668

◆◇◆ 軽く食事を摂り、胃腸の動きを見る。 落ち着いてから入浴してから、もう一度バイタルチェックを受けた。 「どうかねぇ…」 「問題ないな。 残りの不調も、何日かで解消される」 「そうかい…。良かったねぇ、さくら」 「はい…っ」 「………逆上せたか?ん?」 「い、いえ…」 ほんのり染まった肌。 ふっくりとした唇。 「ふむふむ…」 「え、あ…の」 「おいたをした感じはないが、………ふむ…」 袖を捲っても、印はない。 甘噛みをした跡は、首筋にもない。 首筋から続く場所を検分していると、咲良が耳をおさえた。 「あのっ、これはその…、何でもないのです」 「何でもないなら見せろ」 「でも…」 「大丈夫。怒ったりしないよ、ばばにみせておくれ」 「うう…」 「ああ、これか」 「………おや、まぁ…」 荊櫻とばあ様の視線が一点に集中する。 「え、あの…その…」 「ほうほう…」 「なぁるほどねぇ…」 「可愛いもんだな」 少しずつ守弥の目が泳ぎはじめる。 「な、なんだ…?」 「いや、なにも。 おいたをした訳ではないが、もう独占欲が出てるな」 「………」 咲良の髪を掻き分けて荊櫻が左耳を示す。 はっきりと見えない分、軽く噛んだであろう跡が耳殻にあった。

ともだちにシェアしよう!