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◆◇◆
軽く食事を摂り、胃腸の動きを見る。
落ち着いてから入浴してから、もう一度バイタルチェックを受けた。
「どうかねぇ…」
「問題ないな。
残りの不調も、何日かで解消される」
「そうかい…。良かったねぇ、さくら」
「はい…っ」
「………逆上せたか?ん?」
「い、いえ…」
ほんのり染まった肌。
ふっくりとした唇。
「ふむふむ…」
「え、あ…の」
「おいたをした感じはないが、………ふむ…」
袖を捲っても、印はない。
甘噛みをした跡は、首筋にもない。
首筋から続く場所を検分していると、咲良が耳をおさえた。
「あのっ、これはその…、何でもないのです」
「何でもないなら見せろ」
「でも…」
「大丈夫。怒ったりしないよ、ばばにみせておくれ」
「うう…」
「ああ、これか」
「………おや、まぁ…」
荊櫻とばあ様の視線が一点に集中する。
「え、あの…その…」
「ほうほう…」
「なぁるほどねぇ…」
「可愛いもんだな」
少しずつ守弥の目が泳ぎはじめる。
「な、なんだ…?」
「いや、なにも。
おいたをした訳ではないが、もう独占欲が出てるな」
「………」
咲良の髪を掻き分けて荊櫻が左耳を示す。
はっきりと見えない分、軽く噛んだであろう跡が耳殻にあった。
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