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指に絡まる髪を外して、そうっと離れなければ。
気付かれないようにと銀髪に手をかける。
『そうっと……。でも、気付かれないように早くしなければ……』
必死で髪をほどこうとすればするほど、なぜかうまくいかない。
熱があるからなのか、指が縺れて余計に絡んでいくのだ。
『ああ……っ、早くしないと守弥さまが……っ』
絡まる髪をほぐしている筈なのに、どんどん変な感じに絡まっていく。
ほどけたと思えば別の指が絡むのだ。
間の悪いことに、いつも目覚ましをかけている時間が近付いているではないか……。
『は、はわっ、はわわわわ……っ』
しかも……。
もう片方の手が甚平の袖を掴んだ。
『あわわわわ……っ』
カチ……コチ……カチ……コチ……。
妙に秒針の音が気になって仕方ない。
それでも、必死でほどこうとする。
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ……。
『あああ……っ、どうしてこううまくいかないのでしょう……っ』
半ば泣きそうになりながら必死でほどくが、見事に絡んでどうにもならない。
ピピッ、ピピッ、ピピ……ッ。
とうとう目覚ましのアラームが鳴り出した。
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