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『ひあああ!』 慌てて目覚ましを掴み、アラームのスイッチを押す。 ……が。 ピピッ!ピピッ!ピピッ! 止まるどころか音が大きくなってしまった。 「は、はわわわわ……っ!」 アラームの止め方は教えて貰っていたが、音量の調節はまだだった。 何処を押せば良いのか分からないし、闇雲に押しても変わらない。 いや、どちらかというと……。 ピピッ!!ピピッ!!ピピッ!! 余計に音が大きくなってしまっている。 「何処を押せばよいのでしょう……っ」 確かここで間違いない筈!と思って押すのだが、アラームの音が更に大きくなっていく。 「何故にございますか……っ、わたくしはただ静かになってほしいだけなのですっ。 どうして音が大きくなるのですか……っ」 途方にくれていると、守弥の肩がカタカタ震えているのが目に入る。 余りの煩さに怒ってしまったのだと思い、頭の中が真っ白になっていく。 「お願いにございます……っ、止まってくださいませ……っ」 「お前な……、それは反則だろ」 「へ……、……も、守弥さま……?」 「貸してみろ」 「は、はいっ」 手渡された時計を逆さまに持つと、守弥は蓋を外す。 カコカコッ。 中の電池が転がり出て、室内が静かになった。

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