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「………………ッ」 漸く時計の音が止まり、咲良は大きく息を吐いた。 「もっ、申し訳ございませぬっ!」 「……ん?」 「いつも、音が鳴る前に止めていらっしゃったのに……」 「………………」 「止め損なった上に、もっと煩くしてしまいました……」 悄々と項垂れる咲良の頭を、守弥がそっと撫でる。 「これな……。 実は壊れてるんだ」 「……………………はい……?」 守弥の言葉に、咲良は一瞬固まった。 壊れてる? 何が壊れて……? 「いつも鳴り出す前に止めてるのはな、鳴ったら止まらなくなるからだ」 「………は、………はい?」 「スイッチを押しても音が大きくなるだけでな、こうなったら電池を抜くしかないんだ」 守弥が悪戯っぽい笑みを浮かべると、一気に体の力が抜けてしまった。 「………………っ、こっ、壊れているなど、聞いておりませぬぅ……っ」 「いや、ホントにすまん。 いつもは鳴るに止めてるから油断してた。 一生懸命止めようとしてるのを見てたら、何だかもう少し見ていたくなってな……」 「………………っ、いっ、いつからご覧になってたのでございますか……っ」 「………………髪の毛をほどきにかかるあたりからかな」 守弥の一言に息を飲んだ咲良は、顔を真っ赤に染めて頬を膨らませた。 「…………………………ッ! ひっ、酷うございます!ずっとご覧になってたのでございますか! 守弥さまは意地悪でございますっ」 「アワアワしながら一生懸命ほどいてるのが、何だか可愛く見えてな。 すまん」 「~~~~~っ! 意地悪が過ぎまする!もうっ!もうっ!」 「すまんっ、もうしないから許してくれ」 「知りませぬ!守弥さまの意地悪!……っ、…………ッ…………!?」 視界がいきなり反転する。 半泣きで言い募っていた咲良は、守弥に組み敷かれてしまっていた。

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