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「…………っ、あ、はわ……っ」 胸板を押して離れようとするのだが、こういった状況が初めてで、咲良はどうしたら良いのか分からず戸惑う。 「…………やっ、……っ、~~っ」 普通であれば暴れるなりするのだろうが、取っ組み合いをしたことすらない咲良には選択肢がない。 「…………すまん」 「………………っ、……っ、っ」 覆い被さっているのに、耳が垂れて悄々となっている狼のような守弥に対して、どう反応をしたら良いのだろう。 咲良も狼狽えていて言葉が出ない。 「だっ、……い……っ」 「ん?」 「まだ……っ、……なら………、…に……っ」 「……落ち着け。 ちゃんと聞くから、ゆっくり話してくれ」 「~~っ」 言葉を促すというより甘い言葉を囁かれているようで、余計に心臓がバクバクする。 反則だ。 意地悪をした上に、こんな表情をされたら逆らえる訳がない。 「っ、ふ……っ、守弥さま……と、ご一緒できるのが幸せ過ぎて、失念しておりました……」 「…………?」 「わた……くしは……、命を粗末にしてきたことを……っ、受け入れて頂いて、直ぐに儚くなれば……っ、ずっと……守弥さまを………………縛り付けてしまうことに、なるのだと……」 「………………っ?」 「今なら……間に合うかも知れぬと……」 「………………」 咲良が言おうとしていることが、何となく読めた。 命数が残り少ないのに守弥を縛り付けてしまいたくない。 ならば、今のうちに離れようと言うのだろう。 髪をほどきにかかったのも、守弥が眠っている間に行方をくらませようとしたということになる。 「………………っ」 狸寝入りをして髪をほどくのを阻んでいなければどうなっていたか……。 背中がヒヤリとするのと同時に、守弥は息が詰まる感覚を覚えた。

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