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針を刺した時のようなものよりは軽いが、明らかに犬歯の先が食い込んだ感触はあった。
チクリと痛む場所に舌が触れ……。
「………………よし」
妙にスッキリした顔の守弥が起き上がった。
「……あ、あの……、守弥さ……ま…………?
今のは……?」
「ん?」
「何をされたのですか……?」
「予想外の無茶をさせないように、俺からのお仕置きだ。
スマホやGPSを持たせたとしても、何処かに隠したり紛失なんてことも有り得る。
一番確実な方法がこれだ」
「………………?」
首筋を噛んで軽く舐め上げた……。
それがお仕置きだと守弥は言うが、咲良には意味が分からない。
「……あ、あの……、守弥さ……ま…………?」
「マーキングだと言ったろ?」
「まーきんぐ……?」
「そうだ。
さっき首筋を噛んで舐めたのは、お前に俺の印をつけたということだ。
印は体だけじゃなく、いずれは魂魄まで深く刻まれる。
これで、どれだけ離れても俺はお前の居どころがしっかりと分かる」
「え………………っ?」
「これはな、鬼がたった一人の対にだけする求愛の甘噛みだ。
取り消しはきかない。
観念しろ」
「………………!?」
したり顔の守弥に、血の気が一気に引いた。
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