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数時間後……。 フラつく足取りの咲良は、朝食後にベッドへと戻されていた。 目眩を起こしてはいないが、地に足がつかないと言うか体の芯がフワフワするのだ。 「う~ん、微熱というより本格的に熱が上がってきてるねぇ……。 8度台だし、今日は一日ゆっくり寝てた方がいいよ」 「……そんなぁ………。…お手伝いしとうございます……」 「大丈夫。 今日はもともと御朱印帳の担当だったし、それは誰がが代わりに出来る仕事だよ、さくら」 「…………でも……」 「無理をして動いて体力を消耗する方が良くないよ。 そうだろ、ばあ様」 「そうだねぇ。時雨の言うことが正しいよ」 「でも……、お祭りの時だけの御印を押しとうございます……」 夏の大祭の日だけの特別な印は、鬼の面と桜をあしらったものだ。 守弥と時雨の手習いを手伝いしながら、一生懸命練習をしていた。 綺麗に印を押す練習を……。 「特別な御印……。 楽しみにしておりましたのに……」 じわじわ涙が滲む。 ばつが悪いのか、守弥も口を挟んで来ない。 「もうすぐ鬼夜叉が来るからさ。 熱が下がれば、なにかしらの許可が出るよ」 「はい……」 なんとなく、熱が上がった要因に気づいてはいるのだ。 明け方、守弥に噛まれたところが甘く痺れて疼いたままなこと……。 その場所からジワリジワリと広がる熱が、下腹をツクリとさせていることも……。 そして、守弥が甘噛みをする原因を作ってしまったのは咲良自身。 『うう……。 わたくしは、どうしてこうも迂闊なのでしょう……』 自己嫌悪に陥りながら、咲良は唇を噛んだ。

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