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咲良を寝かせた後、守弥は社務所に来ていた。 「すいません、御朱印帳お願いします~」 「あ、はいっ」 本来なら咲良が一手に引き受ける所だが、高熱でダウンしているのに無理をさせる訳にはいかない。 ダウンさせた自覚もあり、守弥が書き手に立候補したのだ。 時雨も隣で奮闘している。 「なかなか咲良のようにはいかないけどさ、かなり悪筆だったの克服したよね~」 「あ、ああ……」 流麗とはいかないが、確実に、綺麗に、丁寧にと心掛けて書いていく。 祭りの期間限定の印を押して完成だ。 特別な印を押したがっていた咲良の顔が脳裏に浮かぶ。 「………………」 時計を見れば、結構時間が経過していた。 「時雨」 「んん~?」 「ちょっと抜けていいか?」 「ん?…………あ、もしかして咲良の様子見に行く?」 「あ、ああ……」 「御朱印帳も落ち着いてきたし、大丈夫だと思うよ。 少し、ゆっくりしてきてもいいんじゃないかな」 「……すまん」 「いーのいーの、傍にいてやんなよ。 体調が良くない時は心細いからさ~」 「傍にいてあげてください」 「大丈夫、私らでカバー出来ますから」 「傍にいるだけでも違いますよ~」 社務所のあちこちから、声がかかる。 「すいません、お願いします」 筆や硯を片付け、守弥は社務所から出た。

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