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コンコン。
軽くノックをしたが、応えはなく。
守弥は静かに部屋に入った。
「咲良、喉が渇いてないか?」
「………………」
熱でしんどいのだろう。
潤んだ瞳がゆっくり動いて守弥を見た。
「水分をとろう。脱水してしまうぞ」
「………………はう……」
起き上がるのを手伝い、寄りかからせる。
小さめのペットボトルを持たせたが、手に力が入らずに取り落とした。
「怠くて無理か……」
「んぅ……、…………ん」
取り落としたボトルを手に取っても、封を切るどころか持ち上げるのも辛そうな状態だ。
レモンの輪切りを入れた水差しから小さい氷を取り出す。
「咲良、氷を含んでみるか?」
「こ……り…………?」
「レモンの香りがする。小さいのならいけるか?」
「………………んぅ……」
気だるげに頷く咲良の口に小さい氷を当てると、迎え入れるように唇が開いた。
「噛み砕くんじゃなくて、舌の上で転がして融かすんだ」
「んん……」
心地よい冷たさに、咲良の表情が和らぐ。
「も、……いっこ……」
「ん」
小さいのをもうひとつ口元に運ぶ。
焦点を結ばない目が細められた。
「こっちなら飲めるか?」
「…………んぅ、……」
経口補水液のパウチを口元に持っていってみる。
「ん……」
噎せないように、少しずつ口に入れる。
ゆっくりだが、喉を落ちていっているようだ。
「ちゃんと飲めたな、偉いぞ」
「…………んに……」
飲みきったところで限界になったらしい。
守弥に寄りかかって寝入ってしまった。
冷却シートを貼りかえ、一旦部屋から出る。
お粥を冷まして持ってくると式神に伝え、守弥は厨房へ向かった。
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