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とても間近に守弥の顔がある。 涼やかな目元や普段は引き結ばれている唇。 それが少し和らいでいて、咲良の鼓動は逸るばかりだ。 「あ、申し訳ご…」 「謝らなくていい。それより」 「……?」 「くれないのか?」 「………?」 「…………」 「んぅ…」 人差し指で唇をなぞられ、背中にピリと電流が走る。 「そろそろ、な…」 「…………っ! え、あ、あの…っ」 ここで漸く守弥が示している事に気づいて、咲良は顔から蒸気が噴き出す位に赤面した。 「っ、あ、あの…っ、その…っ。 ど、どなたもご覧になっては…?」 「ない、な」 悪戯っぽく笑い、もう一度促す。 「うう…。 し、失礼いたしまする…」 キョロキョロと見回して、誰も見ていないのを改めて確認し、しっかり断りを入れる辺りが咲良らしい。 吹き出してしまうのを堪えて守弥は待つ。 サラサラと銀髪が流れ落ちる音の後に、 チュ。 おずおずと唇が触れた。 「んぅ…」 軽く触れ、そっと啄む。 石になる前もそうだったが、咲良はいつも恭しく捧げるように口付ける。 咲良がしたいようにさせてやりたいとも思うが、甘い肌の香りが守弥を誘ってやまない。 湯殿で軽く耳殻を噛んだが、内に籠る熱が守弥を煽り始めている。 その熱にすら気づいてないのだろう。 咲良は目を細めて嬉しそうに守弥を見つめてから、もう一度唇を啄んだ。

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