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「その様子では聞くまでもないが、同意はしたのかお前」
「…………?いえ……」
「同意なし、と。
噛み返しはしたか?」
「いえ……。
…………?噛み返しをするのが決まりなのですか?」
「ああ。
そうか……説明も無しで一方的に噛んで傍を離れた、と。
ふむ……」
「あ、あの……、荊櫻さま……?」
どんどん荊櫻の表情が険しくなる。
「あっ、あの……っ、わたくしが悪いのですっ。
守弥さまのお心を占めたままで世を去ることが怖くて……、今ならまだ間に合うからと……」
「…………明日の事なんか誰にも分かる訳がない。
命数を削ったお前よりも、あいつの方が早いかも知れないだろう?」
「守弥さまにも同じことを言われました。
変に先回りをして怒らせてしまって……」
「逃げられる前に同意無しでマーキングか……そうか……。
やるな、あのガキ……」
剣呑さを増した表情に、咲良は血の気が引く。
「あっ、あの、わたくしが悪いのですっ。
どうか、お気を静めてくださいまし……っ」
「察しが良いのか鈍いのか、どっちなんだお前。
つか、その手を離せ」
「離しませぬ!
お願いにございます!お気を静めてくださいまし!
お腹のやや様に障りまする……っ」
「うちの子らはそんなにヤワじゃない。
離せ。チョコっと撫でて来るだけだ」
「お願いにございまする……」
「大丈夫だ。ほんのちょっとだからな」
ふ……っ。
「ふあ……っ」
細い首筋に軽く落とされた手刀。
くずおれた咲良を寝台に横たえ直し、荊櫻は薄い胸に手を当てた。
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