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「ちょっと待ってくれ、死ぬってどういうことだ。 噛み返しは、任意だったんじゃ……」 「だから、それは鏡の方だと言ってるだろ。 鬼の場合は、噛みついた後に放置すること自体が相手に対する罰則や服従の強制になる。 いわば隷従や眷族化だな。 対の姫にした場合は、強制的に惚れさせる意味合いも含まれる」 「…………何かあった場合に居所が分かる、単なるマーキングじゃないのか……?」 「「……………………」」 守弥の返答に、ばあ様も荊櫻も目が点だ。 「大体は荊櫻から聞いたけど、さくらが消えようとした。 それで、万が一の為に噛んだ……ってことかねぇ……」 「ああ」 「直ぐに駆け付けるぐらいの認識だったんだろうけど、さくらには少しきつかったんだろうと思うよ。 ずっと子供のままでいたのに、強制的に惚れさせる甘噛みをして放置されたからねぇ……」 「………………」 「赤ん坊みたいなのを発情させて放置しとくのと一緒だ。 気の流れが狂って、体内に熱が凝って燻ってる。 冷却シートや氷嚢なんかじゃ冷ませない。 このまま放置したら死ぬ」 「………………っ、どうしたらいいんだ……」 「噛み直しした上で、噛み返しをさせるしかない。 勿論、求愛の甘噛みだから、身代わりではなく正式な花嫁として本人を納得させなきゃいけないがな」 「………………」 「取り敢えず、服従噛みを打ち消ししないと話にならない。 打ち消しの後のリミットは丸一日。 それまでに咲良を納得させるんだ。いいな?」 「……………………………………分かった」 守弥は、傍らに横たわる咲良の襟元を緩めた。

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