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◆◇◆◇◆
「そのような事があったのですか……」
熱が下がって落ち着いてきた咲良は、朦朧としていた間の出来事に驚いた。
ベッドの上にチョコンと座ってばあ様と荊櫻からの説明を聞いているのだが、自分がしたことで結構な大事になってしまったと反省するしかない。
守弥を慕う気持ちと贖罪の気持ち。
予想外の昨晩の発熱。
そこに、守弥がキレて起こした服従を強いる甘噛み。
狂った気の流れが、体だけではなく魂魄にまで攻撃を加えての高熱。
「本当に危なかったんだよ……。
あのままだったら、消耗して魂魄が磨り減ってしまって……」
「申し訳ありませぬ。
すべてはわたくしの……身勝手ゆえのこと……」
言外に、守弥を責めるべきではないと匂わせる。
「本来の花嫁を呼び寄せて消えようとしたのは、確かに有り得んな。
しかも、アイツが寝ている間に逃げるのは最悪なやり方だぞ」
「………………」
「荊櫻、そこまで言わなくても……」
「お前、アイツがどう思ってるか分かってるんだろう?」
「…………………………どう、と…………?」
「「……………………?」」
咲良の反応に、ばあ様も荊櫻も一瞬固まった。
「おい、ちょっと待て。
お前、守弥が自分をどう思ってるか分かってないのか?」
「どうと言われましても……。
わたくしは咲耶の身代わりに過ぎませぬ。
弟か妹のような捉え方をされてるのではないのですか?
昨晩時雨さまにも聞かれましたが、わたくしがどうと言う前に……、選ぶ権利は守弥さまに……」
「「…………………………」」
咲良の一言で、荊櫻とばあ様は床にへたりこんだ。
「おいおいおい……、あの番犬っぷりを目の当たりにしても気づかないなんてどうなってんだ……。
鈍い……、鈍すぎる……っ」
「あれだけあからさまなのに気づいていないなんて、ばばもビックリだよ……」
守弥がどう思ってるか全く気づいていないことに、どう説明したものか。
頭がズキズキと痛んだ。
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