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「………………?」 厨房でのひと仕事を終えて戻った守弥が見たのは、床にへたりこむ荊櫻とばあ様だった。 「お前な……、肝心なことをすっ飛ばし過ぎだ。 ちゃんと言わないと伝わらないだろうが……」 脱力した荊櫻が呟くと。 「いや、さくらも察しが良いのか悪いのか……。 ばばもどうしたものか……」 ばあ様も額を押さえて返した。 「どっちもどっちってか……」 「無口と天然だからかねぇ……?」 「あ、あの……わたくし何かやらかしてしまったのでしょうか……」 ベッドの上では咲良が困惑している。 「確信犯じゃないな。天然、か」 「此方に来るまで世間から切り離されてたし、仕方ないかもしれないねえ……」 「話が見えないんだが、どういうことだばあ様」 お盆を手にしたまま、守弥も困惑する。 「さっきも言ったが時間は限られてる。頑張れよ、若いの」 「伝えたつもりでも、伝わってないこともあるからねぇ……。 時雨もどう説明したらいいのか迷ったって言ってたけど、何となく意味が分かったよ。 頑張るんだよ、守弥」 「……………………だから、何のことだ……」 憔悴した二人は守弥の肩と背中をポンポンと叩いて居間へ向かう。 話がいまいち見えないが、守弥は二人を見送った。

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