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ばあ様と荊櫻が何を言いかけてたかが気になるが、咲良の胃に食べ物を入れなければ。 「ほら、口を開けろ」 「………………」 ベッドの上で固まる咲良に差し出されたのは、お粥を掬ったレンゲだ。 「食欲が無くても、少しは食べないと。ほら」 「…………うぅ……自分で食べまする……」 「まだ手に力が入らないんだから、大人しく食え」 「えうぅ……」 ぱくん。 もぐもぐもぐ……、こくん。 「どうだ、食べられるか?」 「は、はい……っ」 「味はどうだ?美味いか?」 「はっ、はいぃ……っ」 程好く冷ましたお粥はとても美味しい。 美味しいのだが……。 「ほら、もう一口」 「………………っ、えうぅ……」 「ほら」 「…………っ、……っ、……」 いつもは見上げなければならない顔が同じ高さにあるし、咲良の口の大きさに合わせて掬ったお粥を差し出されるのが、なんとも気恥ずかしい。 漸く熱が下がったのに、また上がってきてるのではないだろうか。 「もう少し食べないと、力がつかない。 …………梅漬けも一緒にするか?」 「梅漬け……。おばあ様のですか?」 「いや、違うが……」 「………………?」 食卓に上がる梅干しや漬け物は、ばあ様が作ったものだ。 とても美味しくて、市販のものはまず上がらない。 「昨年、俺が漬けた。 味の保証はないが、試してみるか?」 「………………っ、守弥さまのっ?」 心臓がバクッと跳ねた。

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