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「も、守弥さまお手製の梅漬け……っ? わたくしが味わっても良いのでしょうか……っ? 怒られてしまいませぬかっ?」 「誰が怒るんだ。 それに、お前以外誰が食ってくれるんだ? ほら、口を開けろ」 狼狽えながらも雛鳥のように小さな口を開けてお粥を含む咲良と、ついつい口元が緩む自分の様子を誰かが覗いてないかと、然り気無く視線を巡らす。 「……」 豆粒ほどの小さな付喪神と目があった。 『…………ちぇっ、つまんないの~』 咎めるような守弥の視線と、気恥ずかしさに揺れる咲良の視線を受けて、付喪神がそうっと部屋から出ていく。 「ほら、もう大丈夫だろ?」 「はっ、はい」 ぱくんっ。 もぐもぐもぐ…………、……こくんっ。 「………………っ」 「どうだ?」 「……………………っ、……美味しゅうございます……っ! 酸っぱさと甘さと香りの加減がなんとも……っ。 とても美味しゅうございます」 「そうか。じゃ、もう一口いけるな」 「はい……っ」 守弥が作ったお粥と梅漬け……。 しかも、レンゲで一口ずつ食べさせて貰えるとは。 まだ心臓がバクバクするし、美味しさに心が浮き立ってしかたない。 『はううう……っ。 夢のようでございます……っ。 いっそ、このまま時間が止まってしまえば良いのに……』 一口一口味わいながら食べる咲良の頭を、守弥は優しく撫でてくれた。

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