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なんだか甘い雰囲気の守弥と咲良。
部屋の鏡を通してその光景を居間で覗く、いや、見守る面々……。
「ふっふっふ……。
まさか、雲外鏡を通して見てるなんて、守弥兄ちゃんは気づかないよね!」
「あふう……。
うしゃこ、可愛いぃ~!」
「ハムハム食べてるぅ……。
一生懸命食べてて可愛いぃ~!」
鏡ごしの咲良は、守弥が差し出すお粥を無心で食べている。
雲外鏡が一生懸命に映しているが、離れて見ているばあ様と荊櫻は、子供たちに見せてはいけない展開になれば即座に打ち切るつもりで構えている。
「あ~あ、知らないよ~?
後で兄さんにバレたら、大変なことになるかもよ?」
「時雨にーちゃんは見ないの?
咲良可愛いのに~」
「なんかさ、可愛いのにやらしい感じ~」
「ホントだ、なんかエロい……」
「なになに!?エロいとは聞き捨てならないなぁ。
兄ちゃんにも見せてごらん?」
「やっぱ見るんじゃん」
「そちも悪よのう」
「いえいえ、お代官様こそ」
「「ふっふっふっふ……」」
嬉しそうに覗き込む鏡の向こうでは、守弥がガラスの器を手にしていた。
「あっ、桃缶!」
「しかも、黄色じゃないやつ!」
「とっておきの白桃じゃない?あれ!」
「安いやつじゃなくて、すんごい高いやつだよね。
うわーっ、いいなぁ~っ」
「いいなぁ……、うしゃこ……」
「シロップだけでも飲みたい……」
「はうう……」
シロップを纏った一口分。
それをスプーンで掬い、咲良の元に持っていく。
はくん。
もぐもぐ……。
『……………………っ』
白桃の美味しさに驚愕したのだろう。
頬に手を当て、守弥を見る。
「………………っ、うしゃこっ、かわっ!」
「ちょっ、にーちゃんのあの顔!」
「あんな風に笑うの見たことないって!」
「……っ、うわ、うわ~、うわうわっ!」
咲良の唇についたシロップを守弥が指で拭い取り、ペロリと舐める光景が映された。
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