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「お前は物心つく前に宮に封じられたのだったな」
「はい」
「同じ年頃の者といえば、姉くらいのものか。
此方に来てから、漸く様々な年代の者との関わりを持ったのであろ?」
「は、はいっ」
「お前と同じくらいの男子というものはな、もっと生々しくて肌もニキビがあったりするし、汗臭いしむさ苦しいのだ。
女子とて、人間関係の軋轢で肌も荒れる」
「………………」
「顔の造作の基準も、少し下げないとな」
「基準……で、ございますか?」
「ああ。
お前、自分の可愛らしさが分かってないだろ」
「ふええ?」
「お前の理想は切れ長の目と涼やかな顔立ちだろうが、その姿に凛々しい目鼻立ちはちょっと、な……。
鬼の血筋は、可愛らしい顔立ちを好むんだ」
「………………はい?」
「神代の頃からの倣いでな。
鬼はクリクリした目と通った鼻、花びらや果実のような唇の者を選ぶ」
「………………?」
キョトンとする咲良に、鬼はニヤリと笑う。
「此方に来た時に、守弥だけでなく親兄弟も生唾を飲んだだろう?
お前は鬼の血が最も好む顔立ちだ。
いや、顔立ちだけじゃない。
穏やかな気性、健気さ、小動物っけ……。
華奢な体つきに細い腰。
何から何まで鬼の好みだぞ。
良かったなぁ、お前」
「ほええ……っ!?」
驚く咲良の髪をひとすじ、鬼は己の指に絡める。
「言葉だけが意思を伝えるものではないぞ。
自分を卑下するな。
対の態度から想いを汲み取るのも姫の役目だ」
「………………」
「いっそお前から気持ちを伝えるのも有りだが」
「ふええ……っ、無理無理無理っ、無理でございますぅ……っ」
「だろうな……」
がっくりと肩を落としながらも、鬼は何か良い手はないかと一緒に思案してくれた。
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